小さな体にふわふわの尻尾を持つシマリス。
一見するとただの可愛い動物に見えますが、特徴・生息地・性格を詳しく見ていくと、驚くほど奥深い生態が隠れています。
では、シマリスとはどんな動物なのでしょうか?どんな特徴があり、どのような生息地で暮らしているのか。
そして、性格にはどんな個性があるのか。
本記事では、シマリスの習性や食べ物、寿命、種類、さらには人との歴史までを、最新の研究データと共にわかりやすく解説します。
「どうしてシマリスは世界中で愛されるのか?」その答えを、一緒に探っていきましょう。
- シマリスの性格や特徴をしっかり知ってから飼いたい方
- 動物図鑑だけでは物足りず、生態を深く理解したい方
- 自然界での行動や習性を知りたい探究心のある方
- 動物園や野生観察が好きで、詳しく知りたい方
シマリスの特徴・生息地・性格とは?自然界でどんな役割を果たしているのか?

シマリスとは?
シマリスとは、リス科に属する小型のげっ歯類で、北半球の温帯から亜寒帯にかけて広く分布しています。日本では北海道に生息する「エゾシマリス」が唯一の野生種であり、ユーラシア大陸や北アメリカでは25種ほどが確認されています。
体長はおよそ12〜15センチ、尾を含めると25センチ前後で、体重は80〜120グラムほど。背中に5本の縞模様が入るのが最大の特徴で、この模様が名前の由来となっています。
シマリスは主に地上で生活する「地上性リス」で、木登りを得意とするキタリスやニホンリスとは行動範囲が異なります。地面に巣穴を掘り、そこを拠点に食料を集め、貯蔵し、子育てを行う生活スタイルを持っています。
昼行性で、朝から夕方にかけて活発に活動し、夜間は巣で休みます。この規則正しい行動パターンは、天敵から身を守るために進化したと考えられています。
また、シマリスの最大の特徴は「頬袋(ほおぶくろ)」です。これは口の両側にある伸縮性のある袋で、木の実や種を詰め込んで巣穴まで運ぶことができます。一度に自分の体重の3割ほどを運ぶ個体もおり、効率的に食料を確保する手段として発達しました。
この貯食行動は冬の生存に欠かせないだけでなく、自然環境にも大きな影響を与えます。巣穴に埋められたまま忘れられた種子が春に発芽し、新しい植物の命をつなぐのです。
シマリスの特徴とは?
シマリスの特徴は、見た目の可愛らしさの裏に隠された、驚くほど合理的な構造と行動にあります。まず、体の表面を覆う縞模様は、森林の落ち葉や木漏れ日に溶け込む保護色(ほごしょく)として機能しています。
この模様により外敵から発見されにくくなり、自然界での生存率を高めています。また、目は頭の両側に大きく配置され、ほぼ全方向を見渡せる広い視野を持っています。これにより、猛禽類やキツネなどの天敵の接近を素早く察知できます。
次に注目すべきは、強力な後ろ足です。地上を跳ねるように走る姿はよく知られていますが、この動きは、追跡されても急に方向を変えて逃げるための戦略でもあります。シマリスの足は短い距離を素早く走るのに適しており、巣穴まで一気に駆け込む際にも役立っています。
そして、体の構造と並んで重要なのが行動の特徴です。シマリスは1匹ごとに縄張りを持ち、単独で生活する動物です。複数の巣穴を持つこともあり、危険を感じた際には別の巣に逃げ込むことができます。このような分散型の巣穴管理は、リスクを分散する優れた生存戦略です。
さらに、嗅覚や聴覚も非常に鋭敏で、落ち葉の下に埋まった木の実を探し出す能力を持っています。冬眠前には脂肪を蓄え、秋の間に食料を集める姿は季節の象徴ともいえます。
シマリスの生息地とは?
シマリスの生息地は、主に温帯から亜寒帯の森林地帯です。日本では北海道全域に分布し、落葉広葉樹林や針葉樹林の混ざる森を好みます。特に、地面に腐葉土(ふようど)が厚く積もり、倒木や岩の多い環境は巣穴を掘りやすいため、理想的な生息場所とされています。シマリスは湿度が高すぎる環境を避け、ほどよく乾いた地形を好みます。
巣穴は地中に掘られ、全長2〜3メートルにもなる複雑な構造をしています。中には寝室、食料の貯蔵庫、トイレ、子育て用の部屋などがあり、通気用の穴も備えています。この巣穴は、外敵から身を守ると同時に、温度と湿度を一定に保つ働きがあります。地中の温度は地上よりも安定しており、真冬でも凍結しにくい環境を維持できるのです。
また、巣穴を掘る行動そのものが生態系に良い影響を与えます。掘り起こされた土に空気が入り、微生物の働きが活発になって植物の根の成長を助けます。つまり、シマリスは「小さな土壌改良者」ともいえる存在です。
ただし、近年は人間の活動によって生息環境が変化しています。森林の伐採や都市開発による生息地の分断、観光地での過度な餌付けなどが問題視されています。これにより、人慣れした個体が増える一方で、天敵への警戒心が薄れ、野生としてのバランスが崩れるケースも報告されています。
シマリスの生息環境は、人間の活動によって変化し続けています。そのため、最新の分布データや保全状況を把握することが大切です。
より詳しい情報は、環境省 生物多様性センターの公式ページをご覧ください。
シマリスの性格とは?

シマリスの性格は「警戒心が強く、同時に好奇心旺盛」という独特のバランスで成り立っています。野生下ではわずかな物音にも敏感に反応し、すぐに巣穴へと逃げ込みます。
しかし、危険が去ると巣穴の入り口から顔を出して周囲を観察するなど、慎重ながらも知的な一面を見せます。この性質は、天敵の多い自然環境で生き残るために発達した防衛本能の一部です。
また、シマリスは基本的に単独行動を好み、縄張り意識が非常に強い動物です。特に繁殖期には自分のテリトリーを守るために他の個体を威嚇する行動が見られます。
この行動は鳴き声や尾の動きで示され、「チッ、チッ」という警戒音を出して相手に警告します。これにより、無駄な争いを避け、一定の距離を保ちながら共存する仕組みを作り出しているのです。
ただし、性格には個体差も存在します。観察研究では、人間の姿に慣れて行動が穏やかになる個体もいれば、終始緊張したままの個体も確認されています。これは、経験や生息環境による違いであり、遺伝的な性格傾向と環境要因の両方が関与しています。
このような性格はペット個体にも表れます。飼育下では幼少期から人の手に慣れた個体ほど落ち着いて行動しますが、急な音や動きには敏感に反応する傾向があります。
シマリスの習性とは?
シマリスの習性で最も特徴的なのが「貯食(ちょしょく)」です。秋になると木の実や種を集め、頬袋に詰めて巣穴に運びます。頬袋は皮膚が伸びる構造をしており、一度に多くの食料を運ぶことが可能です。
彼らは1シーズンで数千個もの木の実を隠すことがあり、その一部は忘れられて土の中で発芽します。結果として、シマリスは森の再生を助ける「種子散布者」として重要な役割を果たしているのです。
もう一つの習性として知られるのが「トルパー」と呼ばれる軽い冬眠です。気温が下がると体温と心拍数を下げ、活動を休止しますが、完全には眠りません。数日おきに目を覚まし、貯めた食料を食べたり巣の状態を確認したりします。これは長期間の冬眠ではエネルギー消費が大きくなるため、短期的な休止を繰り返すことで体力を保つ仕組みです。
また、シマリスは清潔好きな動物としても知られています。巣穴には寝室、貯蔵庫、排泄場所が分かれており、食べ物を保管する場所を常に清潔に保ちます。さらに、巣穴の出入り口を複数持つことで外敵からの逃げ道を確保している点も特徴的です。
シマリスの尻尾とは?
シマリスの尻尾は、見た目以上に多機能な器官です。長さは体の半分ほどで、ふさふさとした毛に覆われています。まず第一に、尻尾はバランスを取るために使われます。
地上を走る際や倒木を渡るとき、尻尾を左右に振ることで体の重心を保ち、素早く方向転換することができます。これは運動性能を高めるだけでなく、捕食者から逃げる際にも有効です。
次に、尻尾は体温調節の役割を果たします。寒い日には尻尾を体に巻きつけて保温し、暑い時期には広げて体の熱を逃がします。これにより、シマリスは気温変化の激しい地域でも体温を安定させることができます。
また、尻尾は感情表現や警戒のサインとしても用いられます。危険を察知したときには尻尾を高く持ち上げて膨らませ、相手を威嚇します。仲間とのコミュニケーションにも利用され、動きのパターンによって相手に情報を伝えると考えられています。
さらに、尻尾には防御の役割もあります。捕食者に捕まれた際、シマリスは尻尾の毛を自ら切り離して逃げることがあり、この現象は「自己切断(じこせつだん)」と呼ばれます。毛は再生しますが、元のような密度には戻らないため、命を守るための最終手段といえるでしょう。
シマリスの特徴・生息地・性格を通して見る、人との関係とペットとしての魅力とは?

シマリスの種類とは?
シマリスには世界で約25種が知られています。最も有名なのは北アメリカに生息する「イースタンチップマンク(Tamias striatus)」で、アメリカ北東部からカナダ南部まで広く分布しています。
一方、ユーラシア大陸には「シベリアシマリス(Tamias sibiricus)」が生息しており、日本の「エゾシマリス(Tamias sibiricus lineatus)」はその亜種にあたります。つまり、日本のシマリスは、寒冷な環境に特化したシベリアシマリスの地域型といえるのです。
これらの種類は、外見がよく似ているものの、生息地の気候や植生に合わせて微妙な違いを見せます。寒冷地に住むシマリスほど毛が厚く、体色も灰褐色に近くなります。反対に温暖な地域の個体では赤みを帯びた体毛が目立ちます。
また、鳴き声や行動パターンにも差があり、北米種は「チップ、チップ」という高音の警戒音を出す一方、アジア種はやや低めの鳴き声を発します。
日本国内で飼育されているペットの多くは、このシベリアシマリスです。輸入規制や飼育環境の違いにより、現在は主に国内ブリーダーによる繁殖個体が中心となっています。見た目の違いはわずかですが、毛の密度や体格などに地域性が反映されており、まさに「環境に適応した小さな進化の証」といえます。
シマリスのペットとは?
シマリスは、見た目の可愛らしさと活発な性格から、長年にわたって人気の高いペットです。しかし、彼らを「飼う」ということは単に癒しを得るだけでなく、野生動物としての本能を理解し、その行動を尊重する責任を伴います。
シマリスは本来、単独生活を送る動物で、強い縄張り意識を持ちます。そのため複数飼育は避け、1匹につき1つのケージを用意することが基本です。
飼育環境としては、広さのある縦長のケージが理想で、枝や止まり木を設置して運動できる空間を確保することが大切です。昼行性であるため、朝から夕方まで活発に動き回り、夜は静かな環境を好みます。また、気温20〜25℃を保つことが重要で、冬季はヒーターや保温マットを使用して体調を守る必要があります。
ペットとしての魅力は、人に慣れた個体が見せるしぐさや、食事を頬袋に詰める様子など、自然の行動を間近で観察できる点にあります。個体によっては手から餌を受け取ったり、名前を覚えたりするものもいます。
ただし、すべてのシマリスが人になつくわけではなく、無理に触ろうとすると強いストレスを感じます。慣れるまでの期間は個体差が大きく、数週間から数か月かかることもあります。
さらに、2020年以降は動物愛護法や外来生物法によって、輸入や販売のルールが厳格化されています。特に海外からの個体は検疫が義務付けられており、国内繁殖個体を選ぶことが安全で倫理的な選択です。
シマリスの値段とは?
2025年現在、日本で販売されているシマリスの平均価格はおよそ1万円〜2万5千円前後です。価格は個体の年齢や毛色、健康状態、繁殖地によって異なります。春から夏にかけて繁殖した個体が秋頃に流通するため、季節によっても変動が見られます。特に国内ブリーダーによる健康な幼体は高値で取引される傾向があります。
ただし、シマリスの購入費用は全体コストの一部にすぎません。初期設備としてケージ、巣箱、床材、ヒーター、餌皿などが必要で、合計で約2〜3万円ほどかかります。さらに、毎月の餌代や温度管理、定期的な健康チェックを含めると、年間1〜2万円程度の維持費が想定されます。これらを10年近く継続することを考えると、経済的にも長期的な準備が必要です。
また、安価な個体の中には、野生由来や不適切な環境で育てられたものが含まれている場合もあります。こうした個体は人に慣れにくく、病気や寄生虫を持つリスクが高いため、信頼できるブリーダーや動物専門店から迎えることが推奨されます。近年では、動物福祉の観点から「購入よりも保護された個体の譲渡を検討する」という選択肢も広まりつつあります。
シマリスの食べ物とは?

シマリスは雑食性(ざっしょくせい)で、季節や環境に応じて多様な食べ物を食べます。主食は木の実や種子であり、これに果実や穀物、昆虫、小型の植物などを加えて栄養バランスを整えています。春は若芽や花のつぼみ、夏は果実や穀物、秋は木の実、冬は貯めた種子と、四季ごとに食事の内容が変化するのが特徴です。
飼育下では、専用のリスフードを主食にし、補助としてヒマワリの種やクルミ、ドライフルーツ、小松菜などを与えるのが理想です。脂肪分の高いナッツ類を与えすぎると肥満や肝機能障害の原因となるため、少量に抑える必要があります。また、砂糖を含む果物や加工食品は避け、自然に近い食材を中心にすることが健康維持の基本です。
野生下では、シマリスは冬に備えて秋のうちに食料を集めます。頬袋(ほおぶくろ)を使い、一度に数十個もの木の実を巣穴に運び込む姿はよく知られています。この「貯食(ちょしょく)」行動によって、冬でも餌が確保され、厳しい季節を乗り越えることができます。
興味深いのは、この貯めた種の一部が春まで忘れられ、地中で発芽して新しい植物になる点です。つまり、シマリスの食行動は単なる生存戦略にとどまらず、森の再生を助けるエコロジカルな役割も担っているのです。
シマリスの寿命とは?
シマリスの寿命は、野生と飼育下で大きく異なります。野生では天敵や気候、食料不足などの要因から平均3〜5年といわれています。一方で、飼育下では天敵のいない安定した環境で暮らせるため、6〜10年ほど生きる個体も珍しくありません。最長記録では12年以上生きた例も確認されています。
寿命を延ばすためには、飼育環境と栄養管理が重要です。まず温度管理が欠かせません。シマリスは気温が10℃を下回ると体温を維持するために多くのエネルギーを消費します。冬季には保温ヒーターを使用し、室温を20〜25℃に保つことが理想的です。また、夏場の高温多湿も苦手なため、エアコンなどで涼しい環境を整えることが大切です。
食事の面では、脂肪分の多い種子類を控え、カルシウムとたんぱく質をバランスよく含む餌を与えることで、骨格や内臓の健康を維持できます。
さらに、静かな環境を用意し、過剰なスキンシップを避けることでストレスを最小限に抑えることも寿命の延長に寄与します。ストレスは免疫低下や抜け毛、拒食などの原因になるため、観察を通して性格に合わせた接し方を心がけることが求められます。
シマリスの歴史とは?
シマリスと人との関わりの歴史は古く、数千年前にまで遡ると考えられています。北米やシベリアでは古代から森の中で生活する人々がシマリスの存在を観察しており、季節の変化を知る自然の指標として親しまれていました。「リスが木の実を集め始めたら秋が近い」という言葉は、自然のリズムを伝える知恵として今も残っています。
日本では江戸時代の博物学書『本草綱目啓蒙』に、北海道の山林に生息するリスとしてエゾシマリスの記録が見られます。明治以降になると動物園や研究機関で飼育され、海外からのシベリアシマリスも紹介されました。
20世紀後半には、シマリスは「身近な野生動物」として注目されるようになり、テレビ番組やキャラクター作品にも登場して人気を集めます。
しかし、この人気が一時期、無秩序な輸入や飼育放棄を生む要因にもなりました。特に2000年代初期には、放されたシマリスが一部地域で野生化し、在来種との競合が問題視されたこともあります。
その後、外来生物法の制定や動物福祉の意識向上によって、2020年代には無責任な飼育が減少し、適正飼育が重視されるようになりました。
シマリスの特徴・生息地・性格を通して見る総括
- シマリスとは、リス科に属する小型のげっ歯類で、北半球の温帯から亜寒帯にかけて広く分布している。日本では北海道の「エゾシマリス」が唯一の野生種である。
- 背中に5本の縞模様を持ち、頬袋を使って木の実を運ぶ姿が特徴的。巣穴を掘って生活する「地上性リス」として進化してきた。
- 生息地は落葉広葉樹林や針葉樹林が混ざる森で、倒木や岩の多い地面を好む。巣穴は複雑な構造を持ち、温度や湿度を一定に保つ工夫が見られる。
- 性格は警戒心が強く、同時に好奇心も旺盛。単独行動を好み、縄張り意識が強いが、観察すると多彩な感情表現を見せる。
- 習性として「貯食」「トルパー(軽い冬眠)」「清潔な巣づくり」があり、これらは厳しい環境を生き抜くための合理的な行動である。
- 尻尾はバランス・保温・威嚇・防御など多様な役割を果たし、まさにシマリスの生命活動を支える万能器官といえる。
- 世界には約25種のシマリスが存在し、日本のエゾシマリスはシベリアシマリスの亜種。寒冷地への適応によって毛並みや体格に地域差が見られる。
- ペットとしてのシマリスは、単独飼育が原則で、広いケージと温度管理が不可欠。信頼関係を築くには時間がかかるが、その過程に魅力がある。
- 販売価格は1万円〜2万5千円前後が相場で、健康な国内繁殖個体を選ぶことが推奨される。飼育コストは長期的に見て決して低くはない。
- 食生活は木の実や種子を中心に、自然界では季節ごとに食事内容を変化させる。忘れた木の実が森を再生させるという、生態系的な役割も持つ。
- 寿命は野生で3〜5年、飼育下では6〜10年と長く、温度とストレスの管理が長生きの鍵になる。
- シマリスと人との歴史は古く、自然のリズムを教えてくれる存在として長く親しまれてきた。現代では自然との共生を象徴する動物とされている。
- 総じて、シマリスはその特徴・生息地・性格を通して、可愛らしさの裏に自然との深いつながりを持つ生き物であり、人が学ぶべき“森の小さな先生”ともいえる。


