パカとはどんな動物なのか調べてみると、カピバラに似た見た目や、アルパカと名前が似ていることから混同されやすい存在であることが分かります。
しかしパカは、中南米の自然環境に適応して生きてきた独自の特徴と習性を持つ哺乳類で、見た目だけでは分からない生態や歴史があります。
この記事では、パカとは何かという基本から、特徴・生息地・食べ物・性格・習性、そしてカピバラとの違いまでを順を追って整理します。
- パカとはどんな動物か知りたい方
- カピバラとの違いを知りたい方
- パカの特徴や生態を知りたい方
- パカの生息地や食べ物が気になる方
パカとはどんな動物?特徴・由来から正体を深掘り

パカとは?
パカとは、中南米に生息する大型のげっ歯類に分類される哺乳類です。
結論として、パカはカピバラに似た外見を持ちながらも、分類上も生態的にも異なる独立した動物です。
分類上はテンジクネズミ科(Cuniculidae)に属し、現在は Cuniculus 属に分類されています。
このグループには主に「ローランドパカ(Cuniculus paca)」が知られており、一般に「パカ」と呼ばれる個体の多くはこの種です。
体長はおよそ60〜80cm、体重は6〜12kg程度とされ、げっ歯類の中では大型にあたります。
ずんぐりとした体型と短い脚を持ち、地表を素早く移動することに適した体の構造をしています。
生活様式は夜行性で、昼間は巣穴や倒木の下、茂みの奥でじっと過ごします。
人の活動時間帯と重ならないため、野生下でも姿を目撃される機会は多くありません。
パカは単独行動を基本とする動物で、群れを作ることはほとんどありません。
この行動様式は、捕食者に見つかるリスクを下げるための適応と考えられています。
パカの由来は?
パカという名前は、中南米地域で古くから使われてきた呼び名がそのまま定着したものです。
結論として、この名称は外来語ではなく、現地文化に根ざした呼称だと考えられています。
語源については、先住民の言語に由来するという説が有力です。
スペイン語圏やポルトガル語圏でも「paca」という呼び名が一般的に使われています。
学名は Cuniculus paca(クニクルス・パカ)で、国際的な学術文献でもこの名称が用いられています。
属名の Cuniculus は、ラテン語で「穴を掘る動物」を意味し、巣穴を利用する生態を反映しています。
日本語では直訳名や和名が定着しておらず、カタカナの「パカ」が使われています。
この点が、日本で認知が広がりにくかった一因と考えられます。
名前が似ているアルパカと混同されることがありますが、両者に直接的な関係はありません。
アルパカはラクダ科の家畜であり、パカとは分類も進化の系統も大きく異なります。
パカの特徴は?
パカの最大の特徴は、茶色い体に規則的に並ぶ白い斑点模様です。
結論として、この模様は装飾ではなく、森林環境で身を隠すための重要な保護色です。
この斑点は、木漏れ日が差し込む林床の光と影に溶け込みやすく、天敵から見つかりにくくなります。
見た目の可愛らしさとは裏腹に、生存に直結する機能的な模様です。
体型は胴が太く、首が短く、脚も比較的短い構造をしています。
これは、茂みの多い地面を低い姿勢で移動するのに適しています。
歯はげっ歯類特有の門歯(前歯)が発達しており、生涯伸び続けます。
この歯を使って、硬い果実や殻のある種子を割ることができます。
聴覚は非常に鋭く、わずかな物音や振動にも敏感に反応します。
視力は特別優れているわけではありませんが、夜行性の生活には十分適応しています。
また、泳ぎが得意で、水辺を逃げ道として利用できる点も特徴です。
危険を感じると水中に逃げ込み、身を潜める行動が確認されています。
パカの生息地は?

パカの生息地は、中南米の広い地域に分布しています。
結論として、パカは湿度の高い森林環境を中心に、水辺と深く関わりながら暮らす動物です。
分布域は、メキシコ南部から中央アメリカ、南アメリカ北部を経て、ブラジルやボリビアにまで及びます。
この範囲は熱帯から亜熱帯にかけての気候帯にあたります。
主な生息環境は、熱帯雨林や二次林(人の影響を受けた森林)です。
特に川、湖、湿地の近くを好む傾向があります。
水辺を選ぶ理由の一つは、危険を感じた際の逃げ道として水中を利用できるからです。
パカは泳ぎが得意で、場合によっては水中に身を沈め、呼吸を抑えてやり過ごします。
また、水辺は果実をつける植物が多く、食べ物が豊富な点も重要です。
パカの食性と生息地は密接に結びついています。
森林伐採や農地開発が進んだ地域では、生息地が分断される問題が起きています。
その結果、個体数が減少する地域も報告されています。
IUCN(国際自然保護連合)による評価では、パカ全体は深刻な絶滅危惧種には指定されていません。
ただし、地域ごとの環境破壊の影響は無視できず、長期的な保全が重要とされています。
パカの歴史は?
パカは古くから、中南米の人々の生活と関わってきた動物です。
結論として、パカは野生動物でありながら、人の文化や食生活の中に組み込まれてきました。
先住民社会では、パカは重要なタンパク源として狩猟の対象でした。
大型で肉量が多く、味が良いとされてきたことが理由です。
考古学的調査では、人の居住跡からパカの骨が発見される例があります。
これにより、長い歴史の中で利用されてきたことが裏付けられています。
一方で、パカは家畜のように飼育・繁殖管理されることはありませんでした。
あくまで野生の動物として、自然の中で個体数を維持してきました。
近代以降、森林伐採や道路建設が進むにつれて、生息環境が変化しました。
これにより、狩猟圧と環境破壊が同時に影響する地域も出てきました。
その結果、一部の国や地域では狩猟規制や保護政策が導入されています。
地域によっては、持続的利用を前提とした管理も行われています。
パカとアルパカの違いは?
パカとアルパカは、名前が似ているため混同されがちです。
結論から言うと、両者は分類・生態・人との関係すべてが異なる別の動物です。
アルパカはラクダ科に属する偶蹄類(ぐうているい)で、南米アンデス地方の家畜です。
毛を利用する目的で、人の手によって長く飼育されてきました。
一方、パカはげっ歯類に分類される野生動物です。
家畜化された歴史はなく、自然環境の中で生き続けてきました。
体の構造にも明確な違いがあります。
アルパカは首と脚が長く、草原や高地での移動に適した体型です。
パカは胴が太く脚が短く、森林の地面を移動するのに向いた体型です。
生活環境の違いが、そのまま体の形に表れています。
生息地も大きく異なります。
アルパカは標高の高い寒冷な地域、パカは湿度の高い森林や水辺を好みます。
パカとはどんな暮らしをする動物?性格・習性・他種との違い

パカの食べ物は?
パカの食べ物は、主に果実や木の実、種子などの植物性のものです。
結論として、パカは果実を中心とした食生活を送ることで、森林環境と深く結びついて生きています。
野生のパカは、木から自然に落ちた熟した果実を探して行動します。
自ら木に登って果実を取ることはほとんどなく、地面に落ちたものを利用します。
硬い殻を持つ果実や大きな種子でも、発達した門歯(前歯)を使って割ることができます。
この歯は一生伸び続けるため、硬いものを食べる生活に適応しています。
果実が少ない時期には、地下茎(ちかけい)や植物の根、若い芽を食べることも確認されています。
地域や季節によって、食べ物の内容は柔軟に変化します。
パカは完全な草食動物ではなく、植物性のものを中心に幅広く利用する雑食性に近い存在です。
この食性が、さまざまな森林環境で生き延びられる理由になっています。
また、パカは食べた果実の種を別の場所に運び、糞とともに排出します。
この働きは「種子散布(しゅしさんぷ)」と呼ばれ、森林の再生に重要な役割を果たします。
パカの性格は?
パカの性格は、非常に警戒心が強いことで知られています。
結論として、パカは攻撃的ではなく、防御を最優先する慎重な性格の動物です。
野生では基本的に単独で行動し、他の個体と積極的に関わることはありません。
この行動様式は、天敵に見つかるリスクを減らすための合理的な選択です。
危険を感じた場合、パカは音を立てずにその場を離れることが多いです。
追い詰められたときには、水中へ逃げ込む行動も取ります。
人に対して慣れることはほとんどなく、飼育下でも警戒心が強い傾向があります。
この点が、ペットとして飼われない大きな理由の一つです。
見た目から「おとなしい」「人懐っこい」と想像されがちですが、実際は距離を保つ動物です。
この誤解は、写真や映像だけから判断されることが原因です。
鳴き声はあまり使いませんが、警戒時には低く短い音を出すことがあります。
これは仲間と意思疎通をするためというより、緊張状態を示す反応と考えられています。
パカの習性は?
パカの習性で最も特徴的なのは、夜行性である点です。
結論として、夜間に活動することで天敵との遭遇を避けています。
昼間は巣穴や倒木の下、密集した植物の中でじっと過ごします。
巣穴は自分で掘る場合もあり、複数の出入り口を持つことがあります。
夜になると、決まった行動範囲の中を移動して食べ物を探します。
無駄に遠くまで移動せず、安全なルートを覚えて行動する傾向があります。
パカは視力よりも聴覚と嗅覚に頼って行動します。
暗闇の中でも環境の変化を敏感に察知できます。
泳ぎが得意で、水辺を逃げ道として利用する点も重要な習性です。
危険を感じると水中に入り、身を潜めてやり過ごします。
排泄や行動にはある程度の規則性があり、同じ場所を利用することもあります。
この点は研究対象としても注目されています。
パカとカピバラの違いは?

パカとカピバラは、体つきや顔立ちが似ているため混同されやすい動物です。
結論として、両者は同じげっ歯類ではあるものの、生態・行動・人との関わり方が大きく異なります。
カピバラは世界最大のげっ歯類で、群れを作って生活する社会性の高い動物です。
複数頭で行動し、仲間同士で身を寄せ合う姿がよく知られています。
一方、パカは基本的に単独行動をとる動物です。
他の個体と距離を保ち、縄張り意識も比較的はっきりしています。
生息環境にも違いがあります。
カピバラは草原や湿地、川沿いなど開けた環境を好みます。
パカは森林の中や茂みの多い場所、水辺に近い林床を主な生活の場とします。
視界の開けた場所を避け、身を隠せる環境を選びます。
性格面でも差があり、カピバラは比較的おだやかで、人の存在にも順応しやすい傾向があります。
パカは強い警戒心を持ち、人の気配を感じるとすぐに姿を消します。
パカの赤ちゃんは?
パカの赤ちゃんは、出産直後から体がしっかりしている点が特徴です。
結論として、パカは少産型(しょうさんがた)の動物で、1回の出産につき1匹の子を産むことがほとんどです。
妊娠期間は約3〜4か月とされ、出産時にはすでに目が開き、体毛も生えそろっています。
これは外敵の多い環境で早く行動できるようにするための適応です。
生まれた赤ちゃんは、巣穴の中で母親と過ごします。
母親は頻繁に巣穴を離れますが、授乳のために戻り、最低限の世話を行います。
授乳期間は比較的短く、早い段階で固形の食べ物を口にするようになります。
この点も、単独行動を基本とする生活様式に適した育ち方です。
成長スピードは速く、生後数か月で親と同じような行動ができるようになります。
ただし完全に独立するまでは、母親の行動範囲内で生活します。
多くのげっ歯類が複数の子を産むのに対し、パカが1匹ずつ育てる点は特徴的です。
これは生存率を高めるための戦略だと考えられています。
パカは動物園にいる?
日本国内でパカを見ることは、2025年現在ほとんどありません。
結論として、パカは動物園での飼育や展示が非常に難しい動物です。
理由の一つは、夜行性で強い警戒心を持つ点にあります。
人の視線や騒音が多い環境では、強いストレスを感じやすいとされています。
また、果実中心の食性を長期的に安定して再現することが容易ではありません。
運動量や隠れ場所の確保など、飼育環境の再現にも高い難易度があります。
海外でも、パカを常設展示している動物園は多くありません。
主に研究施設や保護目的の施設で管理されるケースが中心です。
一部の国では、教育や研究目的で限定的に飼育されることがあります。
しかし、一般公開される機会は多くありません。
動物園で見られないからといって、価値が低い動物ではありません。
むしろ、野生環境への適応度が高く、人の管理下に向かない動物だと言えます。
パカとはどんな動物なのか総括
- パカとは、中南米に生息する大型のげっ歯類で、カピバラに似た見た目を持ちながらも分類や生態が異なる野生動物
- 分類上はテンジクネズミ科に属し、夜行性・単独行動を基本とする警戒心の強い性格を持っている
- 名前の由来は中南米の先住民文化に根ざしており、アルパカとは語源・分類・生き方のすべてが異なる
- 生息地は熱帯雨林や水辺の多い森林で、泳ぎが得意なことから水中を逃げ道として利用する習性がある
- 食べ物は果実を中心とした植物性のものが多く、種子散布を通じて森林の再生に関わる重要な役割を果たしている
- 性格はおとなしいというより慎重で、人に慣れることはほとんどなく、自然環境への適応を最優先した行動をとる
- 赤ちゃんは1回の出産で1匹だけ生まれ、生まれた直後から行動できるなど、厳しい環境に適した成長の仕方をする
- カピバラとは見た目が似ていても、群れで暮らすか単独で暮らすかなど生活スタイルに大きな違いがある
- 日本の動物園ではほとんど見られないが、それは飼育が難しく、野生での暮らしに特化した動物であるため
- パカとは動物として珍しい存在ではなく、生態系や人の歴史と深く関わってきた、理解する価値の高い野生動物である


