カンガルーネズミとは、北米の乾いた地域にくらす小さなげっ歯類で、後ろ足でぴょんぴょん跳ねて移動するのが大きな特徴です。
見た目はかわいいのに、生き方はとても合理的で、砂漠という過酷な環境でも体の水分を守りながら暮らしています。
でも、ここで疑問が出てきませんか。水が少ない場所で、どうして生きられるのか。
食べ物は何で、性格はどんな感じなのか。
寿命は短いのか長いのか。
そして飼育や値段を調べると情報が少なくて不安になる方も多いはずです。
この記事では、カンガルーネズミの特徴と習性を中心に、生息地・食べ物・寿命・飼育の現実、さらに絶滅危惧種の話や動物園で会える可能性まで、疑問が自然にほどける順番で整理していきます。
- カンガルーネズミを初めて知った方
- カンガルーネズミの特徴をサクッと知りたい方
- 生息地や食べ物、寿命をまとめて知りたい方
- 習性や性格がどんな感じか気になる方
カンガルーネズミとは?特徴と習性は何がすごい?

カンガルーネズミとは何?
カンガルーネズミは、北アメリカの乾いた地域に暮らしている小さな哺乳類で、ネズミの仲間(げっ歯類)です。名前のとおり、後ろ足でぴょんぴょん跳ねて動く姿がカンガルーに似ているのが大きな特徴です。見た目はハムスターのように愛らしいですが、中身は「砂漠で生き残るための機能」が詰まったかなりタフな動物です。
「カンガルーネズミ」と言っても1種類だけではなく、いくつもの近い種類の総称として使われています。どれも体は小さく、長い尻尾と発達した後ろ足を持ち、乾燥した環境で暮らすのに向いた体つきをしています。ペットショップでよく見るデグーやチンチラとは別グループで、野生ではもっと過酷な環境にいるイメージです。
生活スタイルの中心は地面に掘った巣穴です。日中の暑さが厳しい砂漠では、外に出ているだけで体力も水分もどんどん奪われます。そのため、太陽が高い時間帯は巣穴の中でじっと過ごし、比較的涼しい夜にだけ地上に出て活動します。
また、「水をほとんど飲まずに暮らせる動物」として紹介されることも多いです。これは、食べ物に含まれる水分や、体の中で栄養を分解するときに発生する水(代謝水)を上手に利用できる体のしくみを持っているためです。ただし、どんな状況でも水が不要というわけではなく、「水が少ない環境に強い」くらいに理解しておく方が正確です。
カンガルーネズミの特徴は?
カンガルーネズミの一番分かりやすい特徴は、「後ろ足でジャンプしながら移動すること」です。前足は短く細く、後ろ足は長くて筋肉質になっていて、まさに跳ぶための体といえます。長い尻尾はバランスを取る“舵(かじ)”のような役割を持ち、急な方向転換にも対応しやすい構造です。
このジャンプ移動は、ただ目立つだけの特徴ではありません。砂地や砂利の多い地面では、走るよりも跳んだ方が足を取られにくく、効率よく素早く移動できます。天敵から逃げるときも、一気に距離を稼げるジャンプは有利に働きます。
顔まわりの特徴としては、外側に毛でふちどられた「ほお袋(外頬嚢)」を持つ種類が多いことが挙げられます。このほお袋は、エサである種子をまとめて運ぶ“買い物袋”のような役割を果たします。小さな体で何度も往復する必要がなくなり、危険な地表にいる時間を短くできるので、砂漠生活にはとても理にかなった仕組みです。
さらに、カンガルーネズミは水を節約する体のつくりを持っていると考えられています。たとえば、尿をとても濃くして、できるだけ水を捨てずにすむようにしている点がよく紹介されます。これは、人間を含む多くの哺乳類でも見られる“腎臓(じんぞう)の働き”の一種ですが、乾燥地の小型哺乳類ではその機能が特に発達しているとされています。
また、夜行性であることも重要な特徴です。大きな目やヒゲは暗い中で周りの様子を把握するのに役立ちますし、耳も音に敏感で、接近してくる天敵をいち早く察知する助けになります。こうした感覚の鋭さも「砂漠で生きる道具」の一つです。
カンガルーネズミの生息地はどこ?
カンガルーネズミの生息地は、主に北アメリカの乾燥した地域です。アメリカ合衆国の西部からメキシコ北部あたりまでの、砂漠や半砂漠、乾いた草地などに分布している種類が多いとされています。いわゆる「砂っぽい広い土地」を思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。
ただし、「砂漠ならどこでも住める」というわけではありません。カンガルーネズミにとって重要なのは、巣穴を掘って安全に暮らせる地面があるかどうかです。あまりにも岩が多く固い地面では、深い巣穴を掘るのが難しくなりますし、逆に崩れやすい土では巣穴が長持ちしません。
多くの種は、砂や細かい砂利、ある程度の粘土が混ざった“ほどよく掘りやすく、ほどよく崩れにくい”土壌を選んで暮らすと考えられています。巣穴は、外敵から身を守るシェルターであり、暑さと乾燥から逃れるためのクーラーのような役割も持つので、地面の条件はとても重要です。
生息地には、必ず何らかの植物が存在します。なぜなら、カンガルーネズミの主なエサである種子は、植物が作り出すものだからです。植物がまったく生えないような“完全な砂の海”では、種子も手に入りません。乾燥地であっても、低木や草が点々と生えているような環境が、カンガルーネズミにとって暮らしやすい場所になります。
また、同じ乾燥地でも、標高や地形によって気温の変化や風の強さが違ってきます。風が強すぎる場所では巣穴が砂で埋まりやすいですし、極端に寒暖差が大きい場所では、体力の消耗が激しくなります。こうした点も、生息できる場所を決める要素になります。
カンガルーネズミの習性は?

カンガルーネズミの習性でいちばん大事なのは、夜行性であることと、巣穴を中心に生活することです。昼は巣穴の中で過ごし、日が沈んで気温が下がってから地上に出て行動します。これは、「涼しい時間帯に動いて、水と体力を守る」というとても分かりやすい生き残り戦略です。
夜に活動することで、日中の強い日差しや高い地表温度を避けることができます。砂漠では地面の温度が空気の温度よりもずっと高くなることがあり、小さな体ほどその影響を受けやすくなります。夜行性であれば、そうした負担を大きく減らせます。
巣穴は単なる寝床ではなく、生活のベースキャンプです。カンガルーネズミは巣穴の中で休み、危険を感じたらすぐに戻れるように行動します。巣穴の中は外よりも温度変化が穏やかで、湿度も比較的安定しやすいため、体の水分を守る意味でも重要です。
多くの種類は、ひとつの広い巣穴だけではなく、いくつかの出口や分かれ道を持つ複雑な巣穴を作ることもあります。これは、外敵に入り口を見つけられても、別の出口から逃げられるようにするためと考えられています。巣穴の構造そのものが、防御の仕組みになっているわけです。
行動パターンとしては、群れでべったり一緒に行動するタイプではなく、基本的には単独で動くことが多いとされています。食べ物が限られやすい乾燥地では、同じエサをめぐって争いが起きやすく、一定の距離を保つ方が有利になりやすいからです。
危険を感じたときには、素早くジャンプして距離を取ろうとします。天敵の気配を感じた瞬間に、迷わず巣穴方向へ跳んで逃げる反応は、野生での生き残りに欠かせない習性です。このときの素早さや瞬発力は、人が想像するよりかなり高いと考えられます。
カンガルーネズミの食べ物は何?
カンガルーネズミの食べ物は、基本的に植物の種子が中心です。さまざまな草や低木のタネを集めて食べることで、エネルギーと栄養を確保しています。小さな体ですが、夜の間にかなりの量の種子を集めることができると考えられています。
種子を主食にすることには、砂漠生活ならではのメリットがあります。種子は乾燥していて軽く、まとめて運びやすいので、短時間でたくさん集められます。また、腐りにくく保存がきくため、巣穴の中にためておく「貯蔵(ちょぞう)」にも向いています。
カンガルーネズミは、ほお袋を使ってエサを運ぶことができます。口の横にある毛でおおわれた袋に種子を入れて、一度にたくさんのエサを巣穴に運ぶのです。この仕組みのおかげで、危険な地表で何度も行き来する必要が減り、天敵に見つかるリスクも下げられます。
また、食べ物と水分の関係も重要です。砂漠では、池や川のような「自由に飲める水」がそもそも少ない場所も多いので、食べ物を分解するときに生まれる水(代謝水)をうまく利用できることが生き残りに役立ちます。種子は水分こそ多くありませんが、代謝水を生み出すエネルギー源として優れています。
完全に種子だけを食べるわけではなく、環境によっては植物の葉や茎、場合によっては昆虫などを食べることもあります。これは、乾燥地の中で栄養バランスを保つための柔軟な戦略と考えられます。極端に食べ物が限られる年には、選り好みをしていられない場面もあるからです。
食べ物を巣穴に貯めておく行動は、生活リズムとも深く結びついています。夜のうちに種子を集め、危険が少ない巣穴の中で落ち着いて食べることで、外へ出る時間を減らすことができます。これは、水分や体力の節約と同時に、天敵から身を守るための工夫でもあります。
カンガルーネズミの寿命はどれくらい?
結論から言うと、カンガルーネズミの寿命は野生でおおよそ2〜5年、飼育下では条件が良ければ5〜10年近く生きることもあると考えられます。
ただしこれはすべての種類に共通の数字ではなく、種類や環境によって上下する「目安」としてとらえるのが安全です。
カンガルーネズミ全体をまとめたとき、多くの種では野生で2〜3年ほど生きる個体が多く、運が良い個体で4〜5年に届くかどうか、というイメージになります。
一部の厳しい環境にいるグループでは、1〜2年ほどで世代交代しているとみられるケースもあり、平均寿命はかなり短めです。
一方で、飼育下の記録を見ると、同じカンガルーネズミでも5〜8年ほど生きる例があり、最長では9〜10年近く生きたケースも報告されています。
これは、野生では天敵やエサ不足、気温の変化などのストレスが重なり、長く生きる前に命を落とす個体が多いことを反映しています。
逆に飼育下では、エサが安定し、天敵もおらず、極端な暑さ寒さも人がある程度調整できるため、本来もっている寿命のポテンシャルを発揮しやすくなります。
目安として整理すると、野生のカンガルーネズミは「平均2〜3年、長くて4〜5年」、飼育下では「多くは5〜8年、最長クラスで9〜10年近く」というバランスだと考えてよいでしょう。
もちろん、この数字は個体差や体調、飼育環境の良し悪しによって簡単に前後します。
とくに飼育下では、温度管理やエサの内容、ストレスの有無が寿命に直接影響しやすい点は無視できません。
カンガルーネズミとは?特徴から飼育や値段や保全は分かる?

カンガルーネズミの性格は?
カンガルーネズミの性格は、ひと言でまとめると「警戒心が強くて、距離を保っていたいタイプ」です。その背景には、カンガルーネズミが天敵の多い乾燥地で暮らす、小さな獲物側の動物だという事情があります。
野生では、音や影に素早く反応して逃げることが生き残りに直結するため、人の動きにも敏感になりやすい性質を持っています。
近づいたり手を伸ばしたりすると、ぴょんと大きく跳ねて距離を取ろうとするのも自然な反応です。
このとき、「嫌われている」と感じる必要はなく、むしろ健康なカンガルーネズミらしい防御行動だと受け止めるのが良いでしょう。
夜行性なので、本来の活動時間は人が寝ている時間帯です。
昼間に無理に触ろうとすると、眠い状態で起こされることになり、性格うんぬん以前にストレスになりやすくなります。
落ち着いているときのカンガルーネズミは、巣穴の出入口付近を行き来したり、ヒゲで周りを確認しながらエサを探したりと、コツコツした動きが多いです。
逆に、ストレスを感じるとずっと隠れたまま出てこなかったり、ケージの中を落ち着きなく走り回ったりと、分かりやすい行動の変化が出ることがあります。
カンガルーネズミは飼育できる?
カンガルーネズミの飼育については、「理論上は可能な条件もあるが、かなり上級者向けで、気軽にはおすすめしにくい」と考えるのが現実的です。
見た目が小さくてかわいいからといって、ハムスターと同じ感覚で飼える動物ではありません。
まず押さえたいのは、カンガルーネズミが“砂漠に特化した生活スタイル”を持つ動物だという点です。
夜行性・ジャンプ移動・巣穴生活という特徴を、一般的な小動物用ケージでそのまま再現するのは簡単ではありません。
ケージは高さと床面積の両方が必要で、ジャンプしてもぶつかりにくいスペースを確保する工夫が求められます。
床材も、掘る・隠れるといった行動がある程度できる厚みが必要ですが、分厚くしすぎると掃除の手間や衛生管理が難しくなるというジレンマがあります。
温度や湿度も重要なポイントです。
「砂漠の動物だから暑さは大丈夫」と思われがちですが、急な温度変化や蒸し暑さは大きな負担になりますし、室内の空調に頼る場合は年間を通して細かい管理が必要です。
エサについても、カンガルーネズミ 食べ物の基本は種子ですが、市販フードだけで完璧に代用できるとは限りません。
単純に“乾いたエサなら何でもいい”というわけではなく、栄養バランスや歯のすり減り方なども考える必要があります。
さらに大切なのが、法的なルールや入手ルートの問題です。
国や地域によって輸入・販売・飼育に関する規制が違うため、「ペットとして売っているから大丈夫」とは限らず、事前の確認が欠かせません。
病気になったときに診てもらえる動物病院があるかどうかも、現実的には大きなハードルです。
エキゾチックアニマルに対応できる病院は地域によって差が大きく、事前に探しておかないと“診てもらえる場所がない”という状況になりかねません。
カンガルーネズミの値段はいくら?
カンガルーネズミの値段について最初にお伝えしておきたいのは、「はっきりした相場を出すのが難しい」という点です。一般的なペットのように、全国どこでも同じような価格帯で売られている動物ではありません。
理由のひとつは、そもそもの流通数が少ないことです。
日本国内で安定して販売されているエキゾチックアニマルとは違い、カンガルーネズミはショップやブリーダーの情報自体がほとんど出回っていません。
流通が少ない動物ほど、仕入れルートやタイミングによって値段が大きく変わりやすく、「だいたい○○円」という形でまとまりにくくなります。
インターネット上でも、カンガルーネズミ単体の価格だけを確実に示す信頼できる情報は、2025年現在でも多くありません。
また、仮に生体の値段が分かったとしても、“それだけで済む”わけではないのがカンガルーネズミの難しいところです。
広めで安全なケージ、砂や床材、温度管理のための機器、エサの準備、ケージや床材の交換にかかるランニングコストなど、初期費用と維持費の両方が重くのしかかります。
さらに、エキゾチックアニマルを診てくれる動物病院に通うことを考えると、診察代や検査代も無視できない出費になります。
珍しい動物ほど、診療できる病院の数が少なく、必然的に通院コストが高くつくケースもあります。
輸入に関わる場合は、輸送費や各種手続きの費用が上乗せされることもあります。
この部分は表に出にくいため、「数字だけ見ると意外と安い」と感じても、実際にかかる総額は想像以上、というパターンになりがちです。
カンガルーネズミは絶滅危惧種なの?

カンガルーネズミは「全部が絶滅危惧種」というわけではありませんが、種類によっては絶滅の危険が高いグループも含まれています。
まず前提として、カンガルーネズミという名前は一つの種ではなく、いくつもの近い仲間をまとめた呼び方です。
その中には数が安定している種類もあれば、生息地が狭くなり絶滅危惧種として扱われている種類もあります。
たとえば、アメリカでは一部のカンガルーネズミが、国の法律上「絶滅のおそれがある」とされ、特別な保護の対象になっています。
これは、農地開発や道路建設などで暮らせる場所が分断され、個体数が減ってきたためです。
乾燥地の生き物だから安全、というわけではなく、「たまたまその場所が人間の利用と重なったかどうか」で運命が大きく変わります。
同じカンガルーネズミでも、広い範囲に分布している種類はまだ余裕があり、狭い範囲にしかいない種類ほど危険度が高くなりやすいのです。
絶滅危惧の議論では、「どれくらい数が減ったか」だけでなく、「これから先、数を回復できる条件が残っているかどうか」も重要になります。
生息地がバラバラに分かれてしまうと、別々のグループ同士が出会えず、長期的には遺伝的な多様性も失われやすくなります。
カンガルーネズミは種類が多く、絶滅危惧かどうかは種ごとに評価が分かれます。最新の公式評価は、IUCNレッドリスト(国際自然保護連合)で種名ごとに確認できます。
カンガルーネズミは動物園で見られる?
カンガルーネズミは日本で「いつでもどこでも見られる動物」という位置づけではありません。
少なくとも、キリンやライオン、レッサーパンダのような“定番メンバー”とは違う立ち位置の生き物です。
まず、夜行性で小さく、しかもジャンプが得意という性質があります。
そのため、展示する側から見ると「暗さ」「見やすさ」「逃げないための構造」を同時に成立させる必要があり、展示のハードルがかなり高くなります。
来園者の立場からすると、「暗い部屋の奥で小さな動物がすばやく動いている」状況は、そもそも見つけづらいという問題があります。
それでも動物のストレスを優先するなら、明るくしすぎるわけにもいかず、展示としてはジレンマが大きいのです。
さらにややこしいのが、「名前が似ている別の動物」の存在です。
日本の動物園には、カンガルーの仲間である「ネズミカンガルー」がいる園がありますが、これはあくまでカンガルー側の仲間で、カンガルーネズミとは全く別の生き物です。
名前だけを見ると「カンガルーネズミっぽい」と勘違いしやすいので、展示パネルなどをよく読むことが大切です。“カンガルー寄り”と“ネズミ寄り”で、分類も生活もかなり違います。
海外の一部の施設では、砂漠の小動物コーナーや夜行性動物舎でカンガルーネズミを展示している例もあります。ただし、展示内容は時期によって変わるため、「この動物園なら絶対会える」と言い切るのは難しいのが正直なところです。
日本でどうしても実物を見たい場合は、まず行きたい動物園の公式サイトや問い合わせ窓口で「カンガルーネズミの展示があるか」を事前に確認するのが確実です。
そのうえで、夜行性コーナーや小型げっ歯類のエリアをじっくり見て回ると、似た環境で暮らす別の動物たちとの比較も楽しめます。
カンガルーネズミの歴史は?
結論から言うと、ペットとしての歴史よりも、研究対象や保全の対象として注目されてきた歴史の方がずっと長い動物です。
北アメリカの先住民社会においては、カンガルーネズミのような小型のげっ歯類は、身近な野生動物として存在していました。
ただし、具体的な「カンガルーネズミ」という名前や分類が整ったのは、近代的な生物学が発展してからのことです。
19世紀以降、北アメリカの動物相が本格的に調査されるようになるなかで、砂漠にすむ跳ぶネズミとしてカンガルーネズミが記載され、次第に学術的な関心を集めるようになりました。
特に、乾燥地帯で生活する哺乳類の代表例として、体のつくりや生理機能(せいりきのう)が詳しく調べられてきました。
研究の大きなテーマの一つは、「なぜほとんど水を飲まずに暮らせるのか」という点です。
腎臓の働き方、尿の濃さ、呼吸による水分の失われ方、鼻や気道の構造などが順番に明らかにされていき、カンガルーネズミは“砂漠適応のモデル動物”として有名になっていきました。
最近では、ゲノム(全遺伝情報)を使った研究も進み、乾燥への強さや腎臓の特徴が、どんな遺伝子の組み合わせと関係しているのかが少しずつ分かってきています。
こうした最新の研究は、人間の医療や環境変化への適応を考えるうえでも参考になるため、カンガルーネズミの存在意義は単なる「珍しい動物」にとどまりません。
一方で、生息地の開発や農地化が進むにつれて、「カンガルーネズミをどう守るか」という保全の議論も歴史の中に組み込まれるようになりました。
絶滅危惧種に指定されたグループでは、保護区の設定や生息環境の回復、土地利用の調整などが試みられています。
カンガルーネズミとはどんな動物か特徴を総括
- カンガルーネズミとは、北アメリカの乾燥地にすむ小型のげっ歯類です。後ろ足でぴょんぴょん跳ねて動きます。
- 体は小さく、後ろ足が発達し、長い尻尾を持ちます。ジャンプで素早く移動するのに向いた体つきです。
- 顔の横にはほお袋があります。種子をまとめて運ぶための“袋”として役立ちます。
- 生息地は砂漠や半砂漠、乾いた草地などです。巣穴を掘れる土と、エサになる植物がある場所を選んで暮らします。
- 昼は巣穴で休み、夜に外へ出て活動する夜行性です。暑さと乾燥を避けるための生活リズムです。
- 食べ物の中心は植物の種子です。集めた種子を巣穴に貯めて、少しずつ食べます。
- 水の少ない環境に強く、食べ物から得られる水分や代謝水をうまく利用して生きています。
- 寿命は、野生ではおおよそ2〜5年ほどです。飼育下では5〜10年近く生きる可能性もあります。
- 性格は警戒心が強めです。人とべったり触れ合うより、静かな環境でそっと観察する方が向いています。
- 飼育は理論上は可能な場面もありますが、環境づくりや法律、病院探しなどのハードルが高いです。上級者向けと考えた方が安全です。
- 値段は流通が少なく、はっきりした相場を出しにくい動物です。生体代だけでなく、設備や維持費を含めた総コストで考える必要があります。
- カンガルーネズミ全体が絶滅危惧種ではありませんが、一部の種は生息地の減少などで保護対象になっています。
- 動物園でいつでも見られる動物ではありません。展示されているかどうかは施設や時期によって変わります。
- 研究の世界では、砂漠で水をほとんど飲まずに生きるしくみを調べるモデル動物として長く注目されてきました。


